まだうんと若くて、最初の結婚をしたばかりのころのことだ。
独身時代は実家に住んでいたためおよそ家事をしたことがなかった。ましてや夕飯の買い物なんてすべて母任せで、寄生虫のような生活をしていた。
結婚当時住んでいたところは商店街があって、魚や野菜の店が並んでいた。
スーパーよりも新鮮な気がして、なるべく八百屋や魚屋を利用しようと思っていた。
だが、買い物初心者にとって、これらの店はいささかハードルが高かった。
ある日、魚屋の店先に並んでるエボダイがおいしそうだったので、勇気を出して「エボダイをください」と声をかけてみた。
すると、魚屋の主人は「なんだ、大根持ってるじゃないか。今日はブリ大根だな」と、頼みもしないのにブリを包んで押し付けてきた。
若くて弱かった私はあまりのことにただ驚いて、言われるがままにお金を払ってブリを黙って売りつけられてしまった。
個人商店で買い物をする恐ろしさに触れた出来事だった。
またある日、今度は八百屋でキュウリを買おうとした時のこと。
右に左に、ざるの上で暴れたようにあちこちに曲がっているキュウリを手に取った八百屋のおやじが「このキュウリ、こんなに曲がっているけど、火にあぶれば真っ直ぐになるから問題ないよ」と言いながら袋に詰めてくれた。
「そうなんですか」と感心したように言うと、「そんな話をまともに聞く奴はいねえよ」と少し馬鹿にしたように返された。
ああ、そうだよな、そんな馬鹿な話聞いたことないもんな。
この日以来、買い物はスーパーでするようになった。
やはり、買い物初心者には商店街はハードルが高すぎたと感じる出来事だった。
近所のおばあさんがたまたま出店していたお茶屋さんに「高く売ってやるよ」と言われて、ゴルフの会員権を預けたらそのまま行方不明になったという話を聞いて、知らない人を簡単に信じる人もいるんだなと驚いた。
私は曲がったキュウリを押し付けられて、エボダイを食べそこなっただけなので、被害最小ということでまあ良しとしようと気持ちをおさめた。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
苔玉の色が悪くなりました。
多分日に当てていなかったからです。
売っていたお兄さんから「2週間ぐらい外に出しっぱなしでいいよ。茶色くなっても日に当てると色がもどるよ」と言われていたので、夫に「外に出そう」といったのですが、聞く耳を持ちません。
「水が足りないんだ」とせっせと水につけているのを見て、腐るんじゃないかと心配していました。
苔の本の「多くの苔はお日様が大好きです」というのを見せたら、やっと日に当てるのを了承してくれました。
頑固だなあ。